ニュースの概要
bpの公共急速充電ブランドであるbp pulseが、EV充電のローミング基盤ChargeHubのPassport Hubに加わった。ローミングとは、ある会社の会員が別の会社の充電器を使える仕組みのことだ。これにより、北米でbp pulseが運営する95カ所超、850基超の充電ポイントが、ChargeHubのアプリはもちろん、Passport Hubにつながる他の充電サービス事業者や自動車メーカーのサービスからも、検索、利用、支払いができるようになる。これまでbp pulseの充電器を使うには、専用アプリや会員登録が必要な場面が多かった。今回の参加で、利用者は普段使っているアプリのまま、bp pulseの充電器にたどり着ける。充電器の数を増やすだけでなく、既存の充電器を使いやすくする動きとして位置づけられる。
引用元: bp pulse、ChargeHubのローミング基盤に参加し充電アクセスを拡大(CSP Daily News)
分析・見解
充電器の数より先に、使いにくさが問題になっている
EVの普及が進む北米では、充電器の設置数が増えても、利用者の不満は消えていない。理由の一つは、事業者ごとにアプリや会員登録、支払い方法がばらばらなことだ。目の前に空いている充電器があっても、その会社のアプリが入っていなければ使えない。ガソリン車なら、どのスタンドでも同じクレジットカードで給油できる。この差が、EVへの乗り換えをためらわせる地味だが大きな理由になっている。
今回のbp pulseの参加は、この「使えるのに使えない」状態を減らす取り組みだ。設備への新規投資ではなく、つなぎ方の改善で利用価値を引き上げる点に特徴がある。
ローミングは携帯電話の通信網に近い考え方
ローミング基盤は、携帯電話の国際ローミングに似ている。利用者は契約している一社のアプリだけで、提携先の充電器も検索し、充電を始め、料金を払える。裏側では、基盤が認証と料金の精算を引き受ける。
Passport Hubは、充電サービス事業者や自動車メーカーが一度つながれば、他の参加者とも相互に接続できる拠点型の仕組みである。二社間で個別に契約を結ぶ方式だと、参加者がn社なら組み合わせは膨大になる。拠点型なら、各社は一回の接続で済む。bp pulseのような大手が加わると、基盤に乗る充電器の量が一気に増え、他社にとっても参加する理由が強くなる。参加者が増えるほど価値が上がる、典型的なネットワーク効果である。
欧州が先に通った道を北米がたどり始めた
欧州では、各国の事業者間でローミングが早くから進み、複数国をまたぐ旅行でも一枚のカードや一つのアプリで充電できる環境が整ってきた。背景には、公的な支援や規制の後押しがあった。北米は民間主導で、テスラの充電網、Electrify America、EVgo、bp pulseなど、陣営ごとの色が濃い。
米国では連邦の補助金を受ける充電器に、共通の支払い方法や稼働率の基準が求められる流れもある。民間の基盤が先に動き、規制がそれを追いかける形になりつつある。ChargeHubのような中立的な基盤が育つかどうかは、北米の充電体験を左右する。
残る課題は、料金の見え方と充電器の信頼性
ローミングが広がっても、すべてが解決するわけではない。第一に、料金の透明性である。提携先経由だと、会員価格が適用されない、手数料が上乗せされるといったことが起こりうる。利用者が充電前に総額を知れなければ、不信感が残る。
第二に、充電器そのものの信頼性だ。故障中や出力の低い充電器が地図上に表示されたままでは、アプリがつながっても体験は良くならない。ローミングは入口を広げるが、出口の品質は各事業者が守るしかない。今後は、稼働状況をリアルタイムで共有できるかが、基盤の評価を分けるだろう。
ビジネスへの影響
充電事業者は自社アプリ頼みの集客を見直す時期に来た
bp pulseの判断は、自社アプリに利用者を囲い込む戦略から、外部経由の利用も取り込む戦略への転換を示している。充電器は設置してからの稼働率が収益を決める。アプリの利用者数に左右されず、他社アプリ経由でも使われるようになれば、同じ設備でも稼働率が上がる。
中小の充電事業者にとっては、自力で会員を集めるより、基盤に乗って検索や決済を任せるほうが現実的な場合が多い。接続にかかる費用と手数料を、増える利用回数で回収できるか、早めに試算しておきたい。
自動車メーカーと商業施設は選択肢の広がりを活用できる
自動車メーカーにとっては、純正アプリから他社の充電器も案内できれば、購入後の満足度を高められる。充電の不安は、EVを買わない理由の上位に挙がる。商業施設や小売店、コンビニを運営する企業は、敷地に充電器を置く際、特定の一社の網に閉じるのか、ローミング対応の事業者を選ぶのかで、来店客の取りこぼしが変わる。
日本でも、事業者ごとの認証カードやアプリが乱立している。北米の動きは、他社と接続しやすい設備を選ぶという判断軸を、日本の設置者にも示している。