日産、EV駆動装置の英国生産白紙に 欧州で「リーフ」「アリア」不振

日産、EV駆動装置の英国生産白紙に 欧州で「リーフ」「アリア」不振

日産自動車が、英国サンダーランド工場で予定していたEV駆動ユニットの新規生産計画を白紙撤回したと報じられました。欧州市場での「リーフ」「アリア」の販売低迷を受けて、巨額の追加投資を見送る判断に踏み切った形です。今回は、この決断の背景と日本勢の欧州EV戦略を整理します。

欧州EV市場の急減速と日産の事情

欧州ではここ数年、補助金縮小と充電インフラ整備の遅れが重なり、新車販売に占めるBEV比率の伸びが鈍化しています。日産の「リーフ」は欧州BEV黎明期の旗艦モデルでしたが、フォルクスワーゲンID系列やテスラ「モデルY」、中国BYDなどとの競合が激化し、欧州での市場占有率を落としています。SUV型の「アリア」もコストの高さが響き、価格訴求型のライバルに押される展開が続いてきました。

英国サンダーランド工場は日産にとって欧州生産の中核拠点であり、駆動ユニット内製化は次世代EVの収益性を握る重要テーマでした。しかし需要見通しが下方修正される中で、固定費の重い駆動ユニット新ラインに踏み込むより、既存リソースの稼働率を優先する判断が合理的と捉えられたとみられます。投資の前倒し撤回は、欧州事業の構造改革にとって痛みを伴う処置ですが、財務体質の維持には避けがたい選択と言えます。

サプライチェーンと雇用への波及

英国側の影響も無視できません。サンダーランド工場周辺には日産系の部品事業者が集積しており、駆動ユニット新ラインの取りやめは、地場サプライヤーへの受注機を直接縮小させます。英国政府はEV供給網を国内産業政策の柱として位置づけてきたため、政府レベルでの調整も焦点となります。

同時に、北米生産シフトを進める日産にとっては、グローバルでの生産配分の見直しが不可避です。北米と日本国内の電動化拠点に投資を厚く寄せる流れが強まれば、欧州はあくまで現行モデル中心の運用とし、新規プラットフォームは輸出で対応する構図が現実味を帯びてきます。

競合動向と次の一手

欧州の電動化潮流は止まりませんが、勝ち筋は明らかに分岐しています。低価格BEVを攻めるBYDやMG、ソフトウェア統合で差別化するテスラ、プレミアム軸で踏ん張るドイツ勢に対し、日本勢は値ごろ感と耐久性、リセールバリューで存在感を示す必要があります。日産は「リーフ」の次期型でコスト構造を抜本的に見直すと伝えられており、ここでの巻き返しが今後の欧州事業の評価を左右します。

消費者目線では、欧州での日産EV供給が縮小する局面でも、既存ユーザー向けの充電サービスや保守体制が維持されるかが安心材料となります。販売店網の縮小をどう食い止めるか、また中古EVのバッテリー保証延長などのアフター施策をどう打ち出すかが、ブランドロイヤルティの維持に直結します。今回の生産白紙はネガティブニュースに違いありませんが、次世代モデルへの集中投資を急ぐシグナルでもあり、続報を冷静に追う価値があります。