中国EVの車載カメラが軍の機密を映す時代、走る端末の死角

ニュースの概要

ノルウェーで、中国製の電気自動車(EV)が軍関係者の周辺にある機密性の高い情報を録画していた可能性が報じられました。最近のEVは、周囲を映すカメラや音声を拾うマイク、位置情報を送る通信機能を数多く備えています。つまり車は、移動する情報収集の端末にもなり得ます。軍の施設や演習場に近づく車両が映像を撮り続けていれば、持ち主に悪意がなくても、その記録がどこへ送られるのかが問題になります。今回の件は、自動車の安全性を事故や故障だけで語れなくなったことを示す出来事です。知能化が進むほど、車は交通手段であると同時に、情報の通り道になっているのです。

引用元: 中国EVがノルウェー軍の機密情報を録画、インテリジェントカーが揺るがす安全保障 #エキスパートトピ(高口康太) - エキスパート(Yahoo!ニュース)

分析・見解

車がカメラとマイクの塊になった現実

数年前までの車は、機械の集まりでした。いまのEVは違います。駐車支援や自動運転のために、車体の周囲に十数個のカメラとセンサーが並びます。車内には音声操作用のマイクもあります。これらは常時、周囲を読み取って動いています。

ここが落とし穴です。安全のために映像を取り込む仕組みは、そのまま監視の道具にもなります。録画そのものは違法ではありません。問題は、記録がどこに保存され、誰が読めるのかという点にあります。

機密は撮ろうとしなくても映り込む

今回の件で重要なのは、誰かが狙って撮影したとは限らないことです。軍の基地の周辺を走る民間車が、標識や車両、建物を映像に残すのは、車の性質上ごく自然な動きです。ドライブレコーダー(=走行中の映像を残す装置)がある車なら、日本でも同じことが起こります。

違いは、映像が車の外へ出るかどうかです。クラウド(=インターネット上の保管場所)に自動で送られる設計なら、一台一台の映り込みが集まり、地図のように機密が組み上がります。一枚では意味のない写真も、数千台分が重なれば、部隊の動きや施設の配置を読み解く材料になります。この集積こそが本当の脅威です。

各国が規制に動く理由と、先行する事例

アメリカは2024年、中国などで開発されたコネクテッドカー向けのソフトウェアとハードウェアを、規則によって制限する方針を示しました。理由は、通信機能を持つ車が国家安全保障に及ぼすリスクです。中国自身も、軍や政府の施設周辺では、テスラ車の入場を制限した例が知られています。

興味深いのは、これが特定の国だけの話ではない点です。中国は自国の機密を守るために海外製EVを警戒し、欧米は逆に中国製を警戒します。つまり、どの国のメーカーかより、データの流れを誰が握るかが争点になっているのです。

禁止か透明化か、各国が迫られる二択

車を丸ごと禁止すれば、安全は高まります。しかし、価格の安い中国製EVを求める消費者は多く、産業政策とも衝突します。一方、利用を認めたうえで、データを国内に保存させる、第三者が通信内容を検査できるようにする、といった透明化の道もあります。

現実的には、軍や重要施設の周辺だけに制限をかける、地域ごとの使い分けが増えるでしょう。基地の周りでは車載カメラの録画を止める機能を、法律で義務づける案も考えられます。技術の便利さと国の守りのあいだで、線引きを細かく決める時代に入ったといえます。

ビジネスへの影響

社用車と出張先の映像が持ち出されないか点検する

企業にとって他人事ではありません。営業車や役員車がコネクテッド機能を備えていれば、取引先の工場、研究所、未発表の建設現場などを映してしまう可能性があります。まず、保有する社用車のうち、外部通信を行うものを洗い出してください。次に、映像や位置情報がどの国のサーバーに送られるのか、メーカーの説明書で確認します。

特に防衛関連、重要インフラ、先端製造業と取引する企業は要注意です。取引先から、社用車の持ち込み条件を示される例も増えると見込まれます。契約書や入構ルールに、車載機器の扱いを書き加えておくと安心です。

車の調達基準にデータの扱いを加える

これまでの車選びは、価格、燃費、航続距離が中心でした。これからはデータの保管場所、通信の遮断方法、ソフトウェア更新の管理者も評価項目に入れるべきです。通信機能を利用者が止められるか、録画の保存期間を設定できるかは、購入前に確かめられます。

一方で、過剰な反応も禁物です。特定の国の車だから使わないと決めつけるより、仕様を比べて判断するほうが合理的です。実際、欧米や日本のメーカーの車でも、データ収集の範囲は広がっています。公平な基準を社内で一つ作ることが、後のトラブルを減らします。

自社が車載データを扱う側になる場合の備え

車載機器や配送、保険の分野で映像を扱う企業は、保存と共有の範囲を明確にしておく必要があります。個人情報保護法に加え、経済安全保障の視点が加わると、説明責任は一段重くなります。映像を撮らない設計、撮っても端末内で消す設計は、今後の売りになります。

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