ルノーとEDFが描くEV・充電器・電力の一体提供、V2Gが変える車の買い方と電気代の常識

ニュースの概要

ルノー・グループとフランスの電力大手EDFは、電気自動車と家庭用充電器、そして充電の時間を賢く調整する管理サービスをひとまとめにして提供するための提携を結んだ。対象はルノー、アルピーヌ、ダチアの電気自動車である。両社は、電気料金が安い時間帯や電力に余裕のある時間帯に充電を寄せ、利用者の負担と電力網への負荷をともに抑えるサービスを作る。さらに、車に蓄えた電気を家庭で使ったり、需要が高まる時間帯に電力網へ戻したりできる双方向充電(V2G)の技術も活用する。車を売る会社と電気を売る会社が組み、購入から日々の充電までを一つの窓口に近づける動きである。

引用元: ルノーとEDF、EV・家庭用充電器・スマート充電を一体化する提携(Renault Group)

分析・見解

車と電気を別々に買う時代が終わりつつある理由

電気自動車を買った人が最初にぶつかる壁は、車の価格だけではない。自宅に充電器を付ける工事、電気料金の契約、充電アプリの登録と、手続きが三方向に散らばっている。今回の提携は、この散らばりを一本にまとめる試みだ。自動車メーカーが車を、電力会社が電気を担当し、その間にある「家庭での充電体験」を共同で設計する。

これは、携帯電話の端末と通信契約をセットで売った歴史に近い。端末単体の値段より、月々の総額で比べられるようになると、買い手の迷いは減る。

充電時間をずらすだけで電気代は下がる

フランスには、夜間などの安い時間帯に電気料金を下げる契約が古くからあり、給湯器の運転を夜に寄せる習慣も根づいている。EVの充電は、この仕組みと相性がよい。車は朝までに満タンならよく、何時に充電するかは利用者にとってほとんど関係がないからだ。

管理サービスが電力の需給や料金に合わせて自動で開始時刻を選べば、利用者は何もせずに電気代を抑えられる。電力会社にとっても、夕方のピークに充電が集中する事態を避けられる。EVが増えるほど、この「ずらす力」は送電設備への投資を減らす手段になる。

双方向充電は車を動く蓄電池に変える

V2G(=車から電力網へ電気を戻す技術)は、車を移動手段であると同時に蓄電池として使う発想だ。家庭用の蓄電池は数十万円から百万円を超えることもある。一方、EVの電池は50kWh級が珍しくなく、一般的な家庭の一日分の電力量の数倍にあたる。

駐車中の車は一日の大半を動かないまま過ごす。この眠った容量を使えば、太陽光の余剰を夜に回すことも、停電時の非常用電源にすることもできる。ただし、頻繁な充放電は電池の劣化を早めかねない。誰が劣化のリスクを負い、利用者にいくら還元するかが、実用化の分かれ目である。

競争の軸は車の性能からエネルギーの総合力へ

英国では日産リーフと電力小売会社の組み合わせが先行し、ドイツでも自動車メーカーが電力会社と組んだ実証を進めてきた。今回の特徴は、自国最大手の電力会社が、自国を代表する自動車メーカーと組む点にある。

フランスは原子力が中心で、電気の炭素排出が比較的少ない。EVの環境面の説得力が強い土地柄だ。この強みを、販売の現場で「走るほど電気代も安く、環境にもよい」という具体的な提案に変えられるかが問われる。車の性能差が縮まるほど、毎月の電気代や停電時の安心といった暮らしの価値が選ぶ理由になっていく。中国メーカーが低価格で攻勢をかける欧州で、価格以外の差別化を示す動きでもある。

ビジネスへの影響

自動車販売店と住宅設備会社が組むべき相手

EV販売は、車と充電器と電気契約を一括で提案できる体制が強みになる。日本でも、販売店が地域の電力会社や太陽光の施工会社と組み、月額のセット料金を示すだけで、購入の心理的な壁は下がる。まず、自社の顧客が自宅に駐車場を持つ比率、持ち家か賃貸か、太陽光の有無を整理したい。この三つで、勧めるべきサービスがほぼ決まる。

電力会社・充電事業者が確認すべき収益の仕組み

利用者へ還元する対価を、電池の劣化コストより高く設定できるかを試算する必要がある。まずは小規模な実証で、一台あたりの年間の電気代削減額と、ピーク抑制による設備投資の抑制額を測るとよい。契約の説明も重要だ。放電を許す条件、保証への影響、停電時の優先利用などを平易に示さないと、利用者は参加をためらう。

導入前に押さえる三つの確認事項

一つ目は、対応する車種と充電器の組み合わせである。双方向充電は、車も充電器も対応が必要で、規格も地域で異なる。二つ目は保証である。放電利用が車両保証にどう影響するかを、文書で確認する。三つ目はデータの扱いだ。充電履歴は生活の時間帯を映すため、収集範囲と利用目的を事前に明示したい。

法人のEV社用車でも、夜間に充電を寄せるだけで契約電力の上限を抑えられる場合がある。海外の動きを待つのではなく、小さく試して数字を持つことが、後発でも不利にならない近道である。

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